博士後期課程・システム工学専攻

「人材の育成に関する目的」及び「教育研究上の目的」

今日の原子力技術や航空,ロケット技術等の知識集約的高度産業においては,旧来の基盤学問である機械工学,電子工学,情報工学等の個々の技術分野に対する学問分野のほかに,安全設計信頼性解析等に基づく個々の技術分野の統合化,総合化,最適化の技術が要請されます。このように,これからの高度な生産加工技術においては,個々の学問領域に対する演繹的な解析のみならず,帰納的な統合手法(以下「システム・シンセシス」という。)も工学の重要な研究課題となります。

本専攻では,今後の社会的要請に対応し,システム・シンセシスの目指す理念に沿って,人間生活の豊かさに強くかかわってくるエネルギーに関する高効率性の追求と同時に,周囲環境及び人間への影響のフィードバックを考慮し,工学的見地からの人間支援を視野に入れた柔軟で新しい科学技術の発展に貢献し得る教育と研究を行うことを目的とするものです。

本専攻は,上記の目的に照らして,従来の産業の基盤となっている熱・流体工学を母体とする「エネルギー工学教育研究分野」,計測制御工学および加工技術を母体とする「人間支援システム工学教育研究分野」,情報工学を母体とする「情報工学教育研究分野」の計3つの教育研究分野によって構成されます。


研究分野の特色

「エネルギー工学教育研究分野」

本教育研究分野では,エネルギー工学の基盤学問となっている熱力学,流体力学を中心に,高効率エネルギー変換技術,低エネルギー消費型輸送システム,新エネルギー開発等の最新知識の教育及び応用研究を行います。エネルギー工学の基礎となる工学の範囲は広く,熱力学を中心に伝熱工学,燃焼工学,流体工学等にわたっており,また,その応用範囲は,ヒートパイプを使った農業や医療の分野から,極超音速飛翔体用エンジンの設計といった先端技術の分野まで,直接関連する分野は極めて広く,さらに,高度産業に欠かせない電子機器の中枢となる半導体基盤の熱設計といった先端技術を支える学問としても重要です。特に高効率で低公害の熱機関の開発では,学際的な基礎学問の総合的知識が不可欠となっています。これらの背景を考慮して,本分野では,エネルギー工学に関する高度な研究能力と同時に,先端技術の開発を担うことのできる広い視野を持つ人材の養成を目指して教育研究を行います。

「人間支援システム工学教育研究分野」

工学は人間生活を豊かにする学問であり,積極的に人間を支援する研究を深める必要がある.その視点に立って,最近のコンピュータ利用技術,情報通信技術,ネットワーク構築技術,計測・技術・人工知能技術,データ処理技術を駆使し,人間系を含めたシステムの複雑な動的挙動の解析や設計への応用,生体を対象とした医療計測システム等を開発し,工学的見地から人間を支援する教育研究を行います。さらに,今日の知識集約的高度産業においては,ナノテクノロジーを初めとするより先進的な加工技術が要求され,要請される人間支援システムへの適用手法への応用を目指して教育研究を行います。

「情報工学教育研究分野」

人間に友好的なインタフェース,高度な情報処理システム,知的ネットワークなど新しい情報化社会に適応するシステムの基礎研究や開発研究が課題となっている。本分野は,電気・電子工学,情報工学にかかわる研究者で組織し,システムとソフトの両面から電子・情報化社会の基盤をなすマルチメディア通信,知的ネットワークシステム,情報セキュリティ,ヒューマンインターフェイス,画像処理,バーチャルリアリティ,人工知能,ロボット等に関する先端的分野の体系的な教育研究を行います。


研究指導教員及び研究指導内容

エネルギー工学教育研究分野

担当教員 研究内容
小西 克享 教授
工学博士(東京大学)
専攻分野
内燃機関工学,燃焼学
研究テーマ
1.噴霧燃焼における点火遅れに及ぼす諸因子の影響に関する研究
2.噴霧の微粒化特性に関する研究
3.液滴の分裂機構に関する研究

ディーゼル機関を対象とした燃焼系のシミュレーションを行うには,燃料噴霧モデル・噴霧燃焼モデル・化学反応モデルなど数多くの現象論モデルが必要となる。これらのモデルに関しては,これまでもいくつかの提案が行われているが,精度向上のためには,更なる改良が必要である。特に今後は基礎実験をとおして定量的な議論を行うためのデータの収集が重要である。ここでは,定容燃焼実験装置を用いて噴射系及び噴霧燃焼に関する基礎実験を行う方法や計測方法,データ解析方法などを習得する。さらに,実験結果から解析モデルを構築する方法,プログラミング技法などを習得した上で,ディーゼル機関の性能を予測する手法を総合的に研究する。

石原 敦 教授
Ph.D.(イリノイ大学)
専攻分野
伝熱工学,燃焼学
研究テーマ
1.固体ロケット推進薬の燃焼機構
2.ハイブリッドロケットの燃焼

多くの固体ロケットに使用される固体推進薬は,酸化剤と燃料成分からなるが,その燃焼は,3次元非定常なので,その燃焼機構は,極めて曖昧なところが多く,実験的な調査が必要とされている。
 最近の本指導教員研究として,酸化剤と燃料成分を独立に燃焼させることにより,複雑な燃焼現象を単純化させ,複雑な燃焼機構を調べている。

 また,多くの固体ロケットから排出される排気ガスには,多量の塩化水素が含まれ,環境汚染の原因になることが懸念されている。この対策として,固体ロケットのハイブリッドロケット化も,その1つと考えられている。本研究の研究成果は,ハイブリッドロケットの最適設計にも必要不可欠と考えられる。
小林 晋 教授
工学博士(東京大学)
専攻分野
高速気体力学
研究テーマ
衝撃波の反射現象および関連する現象全般に関する研究
1.弱い衝撃波の反射現象におけるノイマン・パラドクス
2.平面斜面上における弱い衝撃波の非定常現象

高速気体中を伝播する波動,特に衝撃波が物体とどのような干渉をするかという問題について研究するため,実験的及び理論的な研究手法の理解と習熟を通して,新しい研究手法にも柔軟に対応できるための応用力を養成する。
実験結果の理論的な解析を通して物理現象を洞察し,仮説を立て,その仮説を証明するような実験を行い,実験と理論の双方向から現象を突き詰める。

長谷 亜蘭 講師
工学博士(千葉大学)
専攻分野
トライボロジー,機械加工
研究テーマ
1.走査型プローブ顕微鏡を用いた凝着摩耗機構の解明
2.分子動力学法を用いた摩耗シミュレーション
3.トライボロジー現象診断・評価に関する研究
4.アコースティックエミッション技術によるマイクロ工作機械の知能化

トライボロジー現象(摩擦・摩耗現象)は,材料,表面,雰囲気,摩擦条件など多くの影響因子が関わり,かつナノ・マイクロスケールの現象を考慮する必要があるため,とても複雑である。そこで,走査型プローブ顕微鏡(SPM) や分子動力学法(MD)などを用いてトライボロジー現象を解明し,摩耗理論の確立を目指す研究を行っている。また,材料の変形・破壊時に生じる弾性波を利用するアコースティックエミッション(AE)技術やその場観手法であるin-situ観察法を利用し,トライボロジー現象の診断・評価を行う研究を行っている。 工作機械知能化の実現を目指し,加工状態を監視して加工状態を評価し,機械自身が最適な加工条件で加工するための基礎実験からシステム構築まで総合的な研究開発を行っている。AE技術を用いて,特に超精密加工機やマイクロ工作機械を対象とした加工状態監視・工作機械知能化の研究を行っている。

髙坂 祐顕 准教授
工学博士(佐賀大学)
専攻分野
熱力学,伝熱工学,流体音響工学
研究テーマ
1.水素製造・輸送・貯蔵システム技術開発および水素利用システム開発に係る研究

水素エネルギー有効利用の問題は,国のエネルギー開発の重要課題とされており,今後,更なる発展が期待される分野である。次世代エネルギーである水素エネルギーを有効に利用するための水素貯蔵・輸送法および水素利用システムの開発を目標に熱力学,伝熱工学に基づき理論的・実験的研究方法を用いて熱解析などの計算モデルを構築し,燃料電池自動車の水素充填問題や水素吸蔵合金を使用した水素貯蔵器や熱駆動型冷凍機など水素利用システム開発に係わる研究を行う。


人間支援システム工学教育研究分野

担当教員 研究内容
趙 希禄 教授
工学博士(東京工業大学)
専攻分野
CAD/CAE,最適設計
研究テーマ
1.機械構造の軽量化設計
2.CAE技術による生産工程の最適化
3.最適化技術による機械製品の品質向上
コンピュータを利用して,機械分野の設計および生産現場の問題を解決するため,強度剛性,振動騒音や衝突特性などの問題解析,三次元複雑構造の形状最適設計,折紙工学を利用した高性能自動車車体構造の開発,板金プレス,樹脂射出成形やダイカスト鋳造など生産工程の最適化,複合材料からなる積層板・シェル構造の最適設計などの研究活動を行う。
福島 祥夫 教授
博士(工学)(群馬大学)
専攻分野
成形加工、CAD/CAE
研究テーマ
1.プラスチック射出成形加工・砂型鋳造加工における解析及び計測に関する研究
2.金型設計・加工及び最適設計手法に関する研究
3.CAD/CAEを活用した実用化設計に関する研究

日本はものづくりを主体として発展してきたことは言うまでもない。昨今では部品の軽量化に関する技術が注目を浴びていると同時に、如何に早く安く製造できるかという技術も重要である。これらに対応できるプラスチック射出成形や砂型鋳造など型を利用した部品製造、樹脂流動解析、湯流れ解析、品質工学などCAD/CAEや最適化手法を用いた効率化設計についても研究し、社会のニーズに対応できる技術者の育成を行う。

橋本 智己 准教授
工学博士(宇都宮大学)
専攻分野
ロボット工学,認知科学
研究テーマ
1.工学的心理モデル
2.搭乗型歩行ロボット

少子高齢社会を迎え,機械システムによる支援が期待されている。本研究室では,1)家庭環境で人間と共に生活し人間を支援する自律ロボット,2)要救助者を早期発見支援する災害救援ロボットの開発を進めている。

皆川 佳祐 准教授
工学博士(東京電機大学)
専攻分野
機械力学
研究テーマ
1.エネルギーによる機器・配管系の耐震性評価に関する研究
2.配管系の損傷モニタリングに関する研究

一般に,機械構造物(機器・配管系など)の耐震設計は設置箇所の地震加速度に基づく静的荷重により行われている。他方,地震時の機械構造物の破壊モードとして,瞬間的な荷重による初通過破壊のほか,累積的な荷重による疲労破壊がある。従来の静的荷重に基づく手法では初通過破壊の評価は可能であるものの,累積的な損傷の評価は出来ない。そこで累積的な損傷を合理的に評価する手法が求められている。

以上のような背景のもと,1)の研究テーマでは累積的な損傷を評価可能なパラメータとしてエネルギーに着目し,耐震性評価手法の確立を目指す。また,2)では配管系を対象に,振動計測により経年劣化や微少な損傷をモニタリングする手法を構築することを目指す。

安藤 大樹 准教授
工学博士(名古屋大学)
専攻分野
機械力学,制御工学,システム設計工学
研究テーマ
1.機能的可変柔軟構造とその制御系の統合化設計
2.産業用小型電動ロボットハンドの開発
3.低侵襲外科手術用柔軟鉗子の開発
4.身体障害者用自助具の開発

制御機械システムにおける機構系と制御系を統合的に設計することにより、両系を区別して設計する従来の設計手法の限界をブレイクスルーする設計技術の確立を目指す。特に、柔軟性を積極的に利用することにより構造に新しい機能をもたせるコンプライアントメカニズム、機能的連続体、連続体ロボットなどの機構系と制御系の統合化設計の研究を行っている。

萩原 隆明 講師
工学博士(群馬大学)
専攻分野
制御工学
研究テーマ
1.PID制御に関する研究
2.制御対象の特徴を利用した制御系設計法に関する研究

様々な要素技術の発達にともない,制御工学が対象とするシステムは, 大規模化かつ複雑化し,あらゆる製品に制御理論が使われ,制御理論や制御技術は産業の発展に多大な貢献をしている。そして,新たな制御理論や制御技術が生まれると,さらなる性能向上や付加価値の増大が見込まれる。そこで,これまでの制御理論をベースにし,新しい制御理論や制御技術の研究とそれらの実システムへの応用に関する研究を行う。


情報工学教育研究分野

渡部 大志 教授
理学博士(東北大学)
専攻分野
微分幾何学・情報数学・応用画像工学
研究テーマ
1.耳介を用いた生体認証技術による犯罪捜査支援システム
2.耳介を用いた生体認証技術によるスマートフォンの開錠アプリ

ネット上での決済や金融機関の端末などで個人認証が必要な場面が増えた。通常,個人認証にはパスワードが利用され,普通に生活していても数多くのパスワードを管理しなくてはならなくなった。管理の問題から一度漏れてしまえば他人の「なりすまし」が可能であり危険である。そこで,盗難,紛失,漏洩の恐れのない,本人だけがもつ特徴を利用し個人を認証する生体認証技術が注目を集めている。当研究室では顔と耳の認証の研究をおこなっている。

鯨井 政祐 准教授
工学博士(埼玉大学)
専攻分野
ユーザインタフェイス,インタラクション
研究テーマ
1.拡張現実感を用いて直感的に操作できるシステム
2.VR空間内での効果的なインタラクション
3.人指向IOT

コンピュータのコモディティ化に伴い,誰にでもわかりやすいユーザインタフェイスはますます重要になっている。本研究室では,拡張現実感,物理センサ,タッチパネル,スマートフォンなどを用いて,直感的で人にやさしいユーザインタフェイス/インタラクションを研究している。

井上 聡 准教授
工学博士(電気通信大学)
専攻分野
生体情報処理,ニューラルネットワーク
研究テーマ
  • 1.メンフクロウによる高精度音源定位マップ形成のニューラルメカニズム
  • 2.各感覚系の情報を統合するバインディング問題に関する研究
  • 3.時空間的タスクを実現するワーキングメモリに関する研究

生物が脳内で行う情報処理は,視覚・聴覚を中心とした感覚系情報処理,知識獲得や記憶として蓄積するプロセスとそれを引き出し利用するプロセス,外界環境に応じた,最適な運動制御メカニズムなどの領域に分けられる。このような情報処理はその働きに応じて,脳内のしかるべき領域で展開されるが,すべての機能モジュールが完全に独立して動作することは,生物が感覚情報を処理し,その結果に伴い運動を行うことから考えにくい。各機能に特化した情報処理モジュールの研究も含め,脳内の各領域がどのように情報を受け渡し,統合し,1つの生物個体として機能するのか,さらに高次な情報処理機構について考察する。

山﨑 隆治 准教授
博士(医学)(大阪大学)
専攻分野
医用画像解析学
研究テーマ
1.骨関節の3次元形態・運動機能計測
2.医用画像処理技術の研究・開発
3.医療用自動解析ソフトウェアの開発

一般に医療機関では、病気の検査、病態の可視化などを目的として、多くはX線レントゲンやCT装置などから取得される医用画像が利用されている。それら医用画像情報を適切に処理、認識、可視化し、病気などの情報を正確に計測、解析することは、精密な診断、治療方針の決定などに極めて重要である。当研究室では、様々な情報工学技術(画像処理技術)を開発し、医療分野に応用する研究を行っている。

前田 太陽 講師
理学博士(金沢大学)
専攻分野
問題解決環境
(Problem Solving Environments)
研究テーマ
1.支援システムの開発
2.自然科学分野の可視化、社会科学分野の可視化

特別な知識やスキルがなくとも利用できるコンピュータシステムである問題解決環境の構築と,アプリケーションに必要となる,可視化,分散・並列計算による作業効率化の研究を行う。計算科学と計算機科学がより融合した支援システムの構築を目指す。


博士後期課程 授業科目

エネルギー工学教育研究分野

授業科目

  • エネルギー工学特別研究
  • エネルギー工学特別講究
人間支援システム工学教育研究分野

授業科目

  • 人間支援システム工学特別研究
  • 人間支援システム工学特別講究
情報工学教育研究分野

授業科目

  • 情報工学特別研究
  • 情報工学特別講究

 

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