埼玉工業大学 工学部 応用化学科
高分子化学研究室
担当教授 成田 正
〒369-0293 埼玉県大里郡岡部町普済寺1690
Phone: 048-585-6836
Fax: 048-585-6004(学科事務室)
E-mail: narita@sit.ac.jp
研究内容
高分子とは分子量が大きい化合物(通常は1万以上)のことで、プラスチックス、ゴム、繊維がその代表的応用例であり、工業製品の材料として欠かせない。当研究室では、新しい高分子物質の開発をメインテーマとし、そのための反応の開発を行っている。特にフッ素をもつ高分子化合物の開発に重点を置き、フッ素をもつビニル化合物(CH2=CH−R)、エポキシド(三員環エーテル)の反応性に注目し、新しい反応を見いだす研究を行ってきた。テフロンに代表されるフッ素樹脂は高い耐薬品性・耐熱性を示すことは有名であるが、市販されているフッ素樹脂の種類は、実は極めて少ないのが現状である。
電子吸引性が極めて高いフッ素およびフルオロアルキル基をもつビニル化合物の反応性については、未知の領域が多く、新しい機能材料の開発へと発展する可能性があり、また学問的にも興味深い分野と考えている。最近、フッ素化学関連企業では、「燃料電池膜」、「船底塗料」、「レジスト材料」が三大研究テーマになっており、猛烈な競争が繰り広げられている。
当研究室では、すでに、テフロンより高い耐薬品性・耐熱性を示す材料の開発に成功し、特許を取得した。最近になって、新しい様式の高分子合成反応を見いだした。その反応では、従来はとうてい出発物質とは考えられなかった化合物を原料とする高分子合成が可能となった。現在はその展開を図り、主鎖中にフッ素とケイ素とをもつ高分子物質の開発も手掛けている。
この様な研究テーマを解決しようとする間に、「未知への挑戦」を行い、一人一人の学生が独自の考え方を持つおとなになり、未開拓分野へ挑戦できるよう育ってほしいと願っている。人間と自然とに対して、化学のPositiveな面を推進し、Negativeな面を解消できる深い化学的素養を身につけてもらいたいと考えている。
略歴
1963年 横浜国立大学工学部応用化学科卒業(阿部研究室)
1965年 東京大学化学系研究科合成化学専門課程修士課程修了(岩倉研究室)
1968年 東京大学工学系研究科合成化学専門課程博士課程修了(鶴田研究室)
1970年 東京大学工学博士
1968年 東京大学工学部文部技官
1973年 東京大学工学部合成化学科助手
1974年 メリーランド大学博士研究員(Bailey研究室)
1976年 埼玉工業大学工学部環境工学科助教授
1983年 埼玉工業大学工学部環境工学科教授
1995年 通商産業省工業技術院名古屋工業技術研究所招聘研究員(兼任)
1998年 埼玉工業大学大学院教授(工学研究科修士課程)(兼任)
1998年 琉球大学理学部非常勤講師
1998年 東京工芸大学工学部特別講義講師
1999年 埼玉工業大学工学部応用化学科に配置換(同環境工学科兼務)(学科名称変更による)
1999年 岡山大学工学部特別講演会講師
2000年 埼玉工業大学大学院教授(工学研究科博士後期課程)(兼任)
学会および社会における活動
1977年 高分子学会会誌「高分子」編集委員
1986年 日本化学会関東支部幹事
1986年 日本化学会誌「化学と工業」トピックス委員会委員
1986年 高分子学会関東支部理事
1986年 日本化学会代議員
1987年 フッ素化学懇談会会員
1987年 日本化学会関東支部常任幹事
1987年 埼玉県産学官交流プラザ特別会員
1988年 埼玉県産学官共同技術開発事業運営委員会委員
1992年 高分子学会91/7ミクロシンポジウム〔神奈川大学〕
「含フッ素高分子化合物の新展開」オーガナイザー
1992年 4th SPSJ International Polymer Conference (Yokohama, Japan), Local Committee Member
1995年 日本学術振興会フッ素化学第155委員会委員
1998年 埼玉県科学技術政策推進委員会提案型研究審査会委員
1998年 「日本化学会誌」編集委員会編集委員幹事
1998年 本庄国際リサーチパーク推進協議会相談役
2001年 「未来材料」編集協力委員
所属学協会
高分子学会(シルバー会員)、日本化学会、有機合成化学協会、フッ素化学懇談会、
アメリカ化学会フッ素部会、アメリカ化学会高分子化学部会
専門
高分子合成化学(アニオン重合)
主な研究テーマ
フッ素を含む化合物の重合反応性に関する研究テーマを設定しています。
含フッ素ビニル化合物のアニオン重合反応性
含フッ素ビニル化合物のラジカル重付加反応性
2002年度卒業研究テーマ
テレフタル酸ビス(α-トリフルオロメチル-β,β-ジフルオロビニル)とシクロヘプタンとのラジカル重付加反応
テレフタル酸ビス(α-トリフルオロメチル-β,β-ジフルオロビニル)と3-メチルペンタンとのラジカル重付加反応
2-ベンゾキシペンタフルオロプロペン付加体の構造
新規α-トリフルオロメチルアクリル酸誘導体の合成
2,3,5,6-テトラフルオロテレフタル酸ビス(α-トリフルオロメチル-β,β-ジフルオロビニル)のラジカル重付加反応性
グルタル酸ビス(α-トリフルオロメチル-β,β-ジフルオロビニル)のラジカル重付加反応性
ヘキサフルオロ-1,3-ブタジエンとテトラヒドロフランとのラジカル付加反応
著書
1. 鶴田 禎二,石森 岐洋,成田 正,安田 佳郎,米山 道男 "有機アルカリ金属化合物" 近畿化学工業会有機金属部会編,「有機金属ハンドブック」 朝倉書店 (1967.4) p. 3-32.
2. 成田 正,鶴田 禎二 "共重合反応性の解釈:モノマー構造と反応性" 高分子学会編,「共重合 I」 培風館 (1975.6) p. 242-256.
3. 成田 正,鶴田 禎二 "共重合反応性の解釈:Q,e概念と経験則" 高分子学会編,「共重合 I」 培風館 (1975.6) p. 256-264.
4. 成田 正 "ビニルポリマー:イオン重合" 高分子学会編,「入門高分子材料設計」 共立出版 (1981.10) p. 28-34.
5. 成田 正 "ビニルアミンとその誘導体" 高分子学会編,「高分子データハンドブック 基礎編」 培風館 (1986) p. 170-174.
6. 成田 正 "ジビニルベンゼン" 遠藤 剛 監修,「反応性モノマーの新展開」 シーエムシー (1988.2) p. 112-122.
7. Tadashi Narita "Radical and Ring-opening Polymerization" Richard A. Pethrick Ed., "Polymer Yearbook, Vol. 5" Harwood Academic Publishers (1989) p. 177-184.
8. 成田 正 (分担執筆),大木 道則,大沢 利昭,田中 元治,千原 秀昭 編集「化学大辞典」 東京化学同人 (1989.10).
9. 成田 正 "ポリジビニルベンゼン" 遠藤 剛 監修,「反応性ポリマーの合成と応用」 シーエムシー (1989.12) p. 294-304.
10. 成田 正 "フッ素系ポリマーの合成:含フッ素モノマーの重合" 高分子学会 編,「フッ素系ポリマー」 共立出版 (1990.6) p. 10-23.
11. Tadashi Narita "Radical Polymerization" Richard A. Pethrick Ed., "Polymer Yearbook, Vol. 6" Harwood Academic Publishers (1990) p. 209-215.
12. Tadashi Narita "Ring-opening Polymerization" Richard A. Pethrick Ed., "Polymer Yearbook, Vol. 6" Harwood Academic Publishers (1990) p. 217-218.
13. Tadashi Narita "Radical Polymerization" Richard A. Pethrick Ed., "Polymer Yearbook, Vol. 7" Harwood Academic Publishers (1991) p. 215-218.
14. Tadashi Narita "Ring-opening Polymerization" Richard A. Pethrick Ed., "Polymer Yearbook, Vol. 7" Harwood Academic Publishers (1991) p. 219-220.
15. 成田 正 "含フッ素ビニルポリマーの合成" 技術情報協会出版部 企画編集,「フッ素ポリマーの開発と用途展開〜高性能、高機能性新フッ素樹脂の開発と応用〜、第VII章第1節」 技術情報協会 (1991.8) p. 199-204.
16. 萩原 時男,成田 正 "含フッ素ポリエーテル" 技術情報協会出版部 企画編集,「フッ素ポリマーの開発と用途展開〜高性能、高機能性新フッ素樹脂の開発と応用〜、第VII章第2節」 技術情報協会 (1991) p. 205-210.
17. Tadashi Narita "Ring-opening Polymerization" Richard A. Pethrick Ed., "Polymer Yearbook, Vol. 8" Harwood Academic Publishers (1991) p. 191-193.
18. Tadashi Narita "Radical Polymerization" Richard A. Pethrick Ed., "Polymer Yearbook, Vol. 8" Harwood Academic Publishers (1991) p. 195-199.
19. Tadashi Narita "Silicon or Fluorine-containing Polymers" Richard A. Pethrick Ed., "Polymer Yearbook, Vol. 9" Harwood Academic Publishers (1992) p. 241-247.
20. Tadashi Narita "Poly(Hexafluoro-1,3-Butadiene)" Joseph C. Salamone Ed., "Polymeric Materials Encyclopedia", CRC Press (1996.7), Vol. 8, p. 6158-6164.
総説
1. 成田 正,今井 正彦 "ビニルポリマーの合成と物性:イオン重合" 高分子,28, 429-435 (1979.6).
2. 成田 正 "α-トリフルオロメチルアクリル酸メチルの重合" 化学と工業,39, 213 (1986.3).
3. 成田 正 "含フッ素ビニルモノマーの重合反応性" 化学工業,38, 153-157 (1987.2).
4. 成田 正 "含フッ素ビニルモノマーのイオン重合" 高分子,37, 252-255 (1988.3).
5. 成田 正,萩原 時男 "含フッ素エポキシドの重合" 高分子加工,39(12), 602-606 (1990.12).
6. Tadashi Narita "Silicon or Fluorine-containing Polymers" International Journal of Polymeric Materials, 20, 285-290 (1993).
7. Tadashi Narita "Anionic Polymerization of Hexafluoro-1,3-butadiene and Characterization of the Polymer" Macromolecular Symposia, 82, 185-199 (1994.5).
8. 成田 正 "高分子科学最近の進歩: 含フッ素ポリマー合成" 高分子,45, 808-813 (1996.11).
9. Tadashi Narita "Anionic Polymerization of Fluorinated Vinyl Monomers" Progress in Polymer Science, 24(8), 1095-1148 (1999).
10. Tadashi Narita (Feature Article) "On the Polymerization Reactivity of Fluorinated Vinyl Monomers" Macromolecular Rapid Communications, 21(10), 613-627 (2000).
11. 藤原 広匡,成田 正 "ペルフルオロイソプロペニル化合物の重付加反応性" 高分子加工,52(6), 264-270 (2003.06).
12. 成田 正 "ラジカル重付加反応による新規含フッ素ポリマーの合成" 未来材料,3(12), 37-42 (2003.12).
13. Tadashi Narita (Highlight) "Novel Fluorinated Polymers by Radical Polyaddition: TheInspiration and Progress" Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry., in preparation.
締切:04.03.31.
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