枝サンゴ骨格の折損強度特性の調査
沖縄高専に勤務していた時に,職場の同僚からの雑談で始まった研究テーマです.「枝サンゴ骨格は何処から折れるのか?」ということをテーマにして,折損箇所の必然性に関する探究を今も行っています.工学分野と理学分野との異分野連携テーマで,違う方向性から物事を考える良い訓練にもなります.枝サンゴの骨格は炭酸カルシウムの天然多孔質体であり,セラミックスの強度評価手法を参考にしながら工学的観点からアプローチを行い,生育環境の拡大・サンゴの成長という生物学的観点からも検討する予定です.サンプルは共同研究先から手に入れたものです.
二枚貝の結晶構造解析
上述したサンゴの骨格成分は,炭酸カルシウムのなかの「アラゴナイト」構造となっています.一般的に海洋生物の生成する炭酸カルシウムは「カルサイト」構造が多いのですが,一部の二枚貝には混在しているものがあり,その混在の理由が200年来の難問と言われる「アラゴナイト‐カルサイト問題」として知られています.娘の中学時代の夏休みの自由研究にちょうどいいと思い,実際にホタテの貝殻を利用して,一枚の貝殻における結晶構造の違いについて調査し,貝柱が付着する部分ではアラゴナイト構造で,それ以外はカルサイト構造であることを確認しました.アラゴナイトの方が高密度(高強度)であることを考えれば,強度が必要なところにアラゴナイトを配置するのはすごく当然と言えば当然だというのが,200年来の問題に対する工学的見地からの見解です.あわせて,サンゴの骨格も調査してみましたが,枝の先端にはストロンチウムなど,カルシウムと同周期の元素が多く含まれていることを確認しました.
食品サンプルの圧縮強度評価
食品をミキサーにかけ,それを乾燥させた「SEEDs」と呼ばれる製品の圧壊試験を調査しました.輸送中に壊れてしまうので,なんとかしたいという依頼が元でした.食品サンプルについては,海洋生物の咀嚼力に関する調査を現在行っています.これも理学との分野横断研究です.
流体関連振動による疲労破壊特性調査
このテーマは疲労特性に関する研究ですが,流体関連振動で材料を振動させて疲労破壊させ,「材料強度」「振動工学」「流体工学」の三分野の観点から現象を考えてみようという,機械工学のなかの分野横断テーマになります.高速増殖炉 もんじゅ のナトリウム漏れ事故(事件?)から発想したテーマですが,分野を横断した競合問題に取り組む研究は今でもあまり例がありません.実際に最大風速 60m/s の回流式小型風洞を作成して,流体関連振動に関する実験を行うと,風向きや風速によって振動モードが異なり,想定外の疲労破壊を生じる面白い結果となりました.学生に異分野融合問題を考えさせる良いテーマでした.ちなみに,猛烈な台風の「瞬間最大風速」が65m/s程度と言われますが,この風洞は「最大風速」で,その風を体験できます.
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