■Max/mspとは・・
"Max/MSP"はフランスのIRCAM(正式名称は音響・音楽の深究と調整センターの略称。パリのポンピドゥー国立文化芸術センターに隣接する国立の研究機関)において開発されたグラフィカルな音楽プログラミング環境である。現在は、cycling'74社で開発・販売が行われている。
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Maxの歴史
Maxはもともと、IRCAMでミラー・パケット氏を中心に1980年代後半に開発されたPatcherエディタにその原型がある。このPatcherエディタは、元々、作曲家・フィリップ・マヌリの”Pluton”という作品のために開発されたもので、マッキントシュ・コンピュータ上で動き、MIDI制御のみが行う事が出来た。音声処理は別の大型の4×コンピュータが担当した。その後このPatcherエディタは、デヴィッド・ジッカレリ氏によって再設計され、1990年にOpcode社から”Max”として商業的にリリースされる事となった。 このMax/Opcodeは、GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェス)を用いたプログラミング環境と、外部オブジェクト開発キットを持つことにより、多くの拡張機能を導入、斬新な発想と使い易いプログラミング環境に多くの関心が寄せられ、1991年には、キーボード・マガジン誌(アメリカ)の読者によって、その年の「革新的なソフトウェア」に選ばれるに至った。OpcodeがGibsonに買収された後の1999年からは、cycling'74社からリリースされている。Maxというソフトウェア名はコンピュータ音楽のパイオニアであるマックス・V・マシューズ氏にちなんでつけられたものである。
- mspとは・・ IRCAMは1989年にIRCAM信号処理ワークステーション(ISPW)というプロジェクトをスタートさせた。 これはNEXTコンピュータ上でリアルタイムに音響処理を行うためのもので、NEXTSTEP(NEXT用OS)上で動くグラフィカル・ユーザーインターフェスと、ISPWボード(NEXT用カード)上で動くFTSという名のアプリケーションを持つものだった。これらはMax/FTSとして知られることになり、IRCAMと30の他のスタジオで使われるようになった。(このカードはコンピュータを含まず、およそ12,000ドルであった) 1995年に作られた”Real Time Sysytem”チームは、コスト的な価値を考慮し高価なハードウェア開発を断念、Max/FTSをマルチプラットフォームへの適応を検討することになる。結果、グラフィックスとリアルタイム処理部分が独立して進化させるべく、SGIコンピュータの為に再設計されることになった。 1996年にミラー・パケット氏(現在、カリフォルニア大学サンディエゴ校)が、Pd(PureData)とよばれる新しいプログラムを開発し始めた。Pdはパワフルになったマイクロプロセッサを持つコンピュータの為のリアルタイム信号処理を目指したもので、SGI上で動くように設計された。現在ではMacOSX、Windowsにも移植されている。デヴィッド・ジッカレリ氏は、このPdの信号処理構造を用いてMaxにオーディオ処理を加えた。それがMax/mspである。
- 参考資料:A brief history of MAX IRCAM